
事故などで前歯が折れてしまった時は、インプラントできれいに治るのでしょうか?前歯で大切なのは審美性で、隣の歯との区別がなく天然歯のように見えるように治療しなければなりません。そして食事の際に噛み切るという役割も欠かせません。
スポーツ中、ぶつかった、転んだ、事故などが発生して前歯が折れた時の治療についてご説明します。
目次
前歯が折れた場合の選択肢
前歯が折れてしまった場合、見た目と機能の両方を回復するためには、適切な治療が必要です。折れた前歯を修復する方法には、次のような選択肢があります。
- 被せ物で修復
- 歯の接着修復
- インプラント治療
この中で、インプラント治療は歯を完全に失った場合、または残存する歯が修復不可能なほど損傷している場合に最適な治療法です。
治療を選択する際に心がけていること
治療法(クラウン・ブリッジ・インプラント)を選ぶ際には、まず患者さんの年齢・生活習慣・見た目へのこだわり・仕事での会話頻度などを細やかに伺います。たとえば、美容に関するお仕事や営業職の方は「治療後の見た目」を最重要視される傾向があり、仮歯や治療期間中の見た目ケアも丁寧にサポートします。
前歯が根元から折れてしまった時の治療は?

前歯が根元から折れてしまった時は、被せ物(クラウン)をつけてもすぐに外れてしまうリスクがありますので、被せ物での治療は難しくなります。その場合は、抜歯の対象となり、抜歯後の治療は入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つから選びます。
前歯の根元が残っている状態なら、抜歯しなくても被せ物治療で済むことがあります。また、前歯の欠けた部分が小さい時は、レジン(歯科用プラスチック)でのダイレクトボンディングやラミネートベニアという薄いセラミックのチップを歯の表面に張り付ける治療できれいに治る場合もあります。
歯牙破折(しがはせつ)
転んだりスポーツでぶつかったり、事故などの外傷によって歯が歯がさまざまな位置で折れた状態を歯牙破折といいます。強くぶつかった際に歯槽骨骨折、歯牙脱臼、歯牙破損、口腔内創傷、口腔外創傷などを起こしている場合があるため、注意が必要です。
前歯が折れた時の衝撃で歯茎の腫れが起こっている時は、腫れがひくまで消炎以外の治療を待ち、歯茎が落ち着いてから治療を行う場合もありますので、担当医の指示に従って下さい。
インプラントで前歯をきれいに治せるか?
インプラント治療は、前歯を美しく自然な状態に回復させるための効果的な方法です。インプラントが前歯の修復に優れた選択肢となる理由は、以下の通りです。
1. 自然な見た目
インプラントは骨に埋め込まれるため、人工歯がしっかりと固定されます。上部構造をセラミックで精巧に作成することにより、天然の歯とほとんど区別がつかない見た目を実現できます。特に前歯の場合、審美性が大切ですが、インプラントはその要求に十分応えられる治療法です。
2. 機能の回復
前歯は見た目だけでなく、噛む機能や発音にも大きな役割を果たします。インプラントによって失った前歯を補うことで、噛む力や発音の機能も自然な状態に近づけることができます。
3. 周囲の歯に影響を与えない
インプラント治療では、隣接する健康な歯を削ったり、負担をかけたりする必要がありません。これは、特に前歯においては重要であり、全体の口腔健康を保つためにも優れた選択肢となります。
4. 骨の維持
前歯を失うと、その部分の骨が徐々に吸収されてしまいますが、インプラントは骨と直接結合するため、骨の維持にも効果的です。これにより、長期的に見ても歯茎や口元の形を保つことができます。
前歯が折れた時のインプラント治療の流れ
- 検査・・レントゲン、CTなどで歯茎と骨の検査を行います。
- 抜歯・・折れた前歯の根っこを抜歯します。その後数か月待ち、歯茎が落ち着くのを待ちます。
- 一次手術・・人工歯根を顎骨に埋入する手術を行います。インプラントが骨と結合する迄そのまま数か月待ちます。
- 二次手術・・人工歯根にアバットメントを取り付け、最終的な上部構造のための型取りをします。
- 最終的な上部構造の装着・・セラミックの上部構造を取り付けると治療は終了します。
インプラント治療の流れで大切にしていること
治療前に「写真や模型、実際の症例写真」を使って、仕上がりイメージや期間・費用・リスクを具体的に説明しています。特に前歯は審美性が問われるため、ミリ単位の位置決めが満足度を左右します。まず仮歯を作成して、こまめに調整することを重視しています。
注意点とリスク
前歯のインプラント治療には以下の注意点とリスクが伴います。
- 治療期間の長さ・・インプラントが骨と結合するまでに数ヶ月かかるため、治療には時間がかかります。
- 費用・・前歯のインプラント治療は審美性が求められるため、費用が高額になることがあります。
- 術後のケア・・治療後も定期的なメンテナンスが必要です。特に前歯は目立つ部分であるため、日常のケアが重要です。
前歯の上部構造について

特に上顎の前歯の場合は審美性が一番に重視されますので、セラミックかジルコニアで上部構造を作成します。
- ジルコニアセラミック冠・・最も高価なタイプ、審美性、耐久性とも最も抜群によい。
- オールセラミック冠・・最も一般的なタイプ、審美性、耐久性ともよい。
治療が終わるまで前歯はないまま?
前歯がないと見た目がとても気になると思います。そのため、前歯の被せ物やインプラント治療の際には必ず仮歯を入れますのでご安心ください。被せ物であれ、インプラントであれ、セラミックやジルコニアで作製すれば、天然の歯と見分けがつかないくらいに色や形を合わせた自然でキレイな前歯が入ります。
前歯をぶつけて折れたときの応急処置は?

転んだり事故にあったりして前歯が折れた場合、傷から出血があればガーゼなどで押えてまず止血します。前歯の先の部分だけが欠けたり折れたりした場合は接着するだけで治ることもあります。
また、前歯や歯ぐきに強い衝撃をうけた時には歯根がダメージを受けて割れていることもあり、ヒビの入り具合によっては抜歯となることもあります。
いずれにしても早めに歯科医院に行きましょう。その時にぜひ守っていただきたい注意点がいくつかあります。
歯が折れたときの応急処置
- 落ち着いて行動する → まずは深呼吸して冷静に対応しましょう。
- 口内を清潔に保つ → 口をゆすぐときはやさしく行い、折れた部分には触れないようにします。
- 出血がある場合は止血する → 清潔なガーゼやティッシュで、出血している部分を軽く押さえます。
- 折れた歯の欠片は保存する → 欠片や抜けた歯は乾燥させず、牛乳または生理食塩水に入れて保存し、早めに歯科医院へ持参します(なければ口の中:舌の下に入れても可)。
- 患部を冷やす → 腫れや痛みがある場合は、タオルなどに包んだ氷で外側から優しく冷やします。
- 早めに歯科医院を受診する → 応急処置後はできるだけ早く歯科医院で適切な治療を受けてください。
※注意事項
- 折れた歯は触りすぎたり、無理に戻したりせず保存を優先してください。
- 消毒薬や市販薬は使用せず、歯科専門医の指示を仰いでください。
この手順で対処し、できるだけ早く専門機関を受診することが大切です。
出典:歯を失ったら(テーマパーク8020 日本歯科医師会)
前歯が折れた状態を治療せずに長い間放置するとどうなる?

前歯が折れてしまったのを長い間放置してしまうと、以下のような問題が起こります。
- 歯が折れた状態が他人から見えると恥ずかしい
- ものを噛み切りにくくなって丸呑みすると消化不良になる
- 発音がしにくくなり、話すことがおっくうになる
- 早めに治療した方が費用が安く済む
- 神経が露出している場合はズキズキ痛む
インプラント治療とは?

歯科治療におけるインプラント治療とは、顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、そのうえに被せ物を取り付けて、失った歯の機能を回復させる治療方法です。
事故や歯周病、虫歯などで歯を失った方が、治療の主な対象者となります。しかしインプラントは外科手術が必要で、全身疾患があって投薬中の方や、顎の骨が少ない方は手術が出来ない場合があります。
また、歯周病で歯を失った方は、歯周病をある程度治療しておかないと、インプラントを埋入してもその周囲の歯肉が歯周病菌によって炎症を起こし、インプラント周囲炎を起こすとやがてインプラントが抜けてしまいます。
インプラントは20歳から可能になります
インプラントが可能な年齢は、顎の骨の成長が止まる20歳くらいからとなります。顎の骨が成長している時期に入れてしまうと、顎の大きさや形が変化しますので、歯並びや見た目に影響が出てしまうリスクがあります。
顎骨の成長期に歯を失った場合は、顎の成長が止まるまでは仮歯や入れ歯を一時的にお使いいただく場合もあります。
【動画】前歯のインプラントについて
クローバー歯科総院長の松本正洋が前歯のインプラントについて解説。
前歯が折れた場合のインプラントに関するQ&A
前歯が折れた場合の応急処置として、まず傷口から出血がある場合はガーゼなどで押さえて止血します。先の部分だけが欠けたり折れたりした場合は、接着するだけで治ることもあります。ただし、触れると怪我をする恐れがあるので絶対に触らないようにし、早めに歯科医院を受診しましょう。
前歯が折れた場合、欠けた歯があれば保存しておくことが重要です。欠けた部分を小さめの容器に入れ、牛乳に浸すか唾液で湿らせて保存しましょう。できるだけ早く歯科医院に連絡し、欠けた部分を持参して受診することで、歯に接着して元のように戻せる可能性があります。
前歯が根元から折れた場合、被せ物での治療が難しくなる場合があります。根元が残っている場合は被せ物治療が可能なこともありますが、抜歯が必要な場合もあります。抜歯後の治療は、入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つの選択肢があります。治療方法は個々の状況によって異なりますので、歯科医院で相談しましょう。
まとめ
前歯が折れた場合のインプラント治療についてご説明しました。前歯は審美性が重要ですので、インプラントが一番きれいな歯をつくれますが、歯が折れたときはまず現在の状況についての歯科医師の診断を仰ぎ、その後治療方法について相談する流れとなります。
インプラントでの治療の際には特に念入りにカウンセリングを行いますので、折れてしまった歯以外にもお悩みの歯がありましたら、お話しください。