
オールオンフォーという治療法は「全ての歯を4本(ケースによっては6本)のインプラントの埋入により作成する」という技術です。
さまざまな理由で全歯を失った方にとっては、オールオンフォーは素晴らしい治療法といえます。ただ、外科手術を行う以上、失敗というトラブルが潜んでいることは否定できません。では、その問題を回避するためにはどうすればいいのかについてご説明します。
目次
オールオン4の失敗にはどんなケースがあるの?
オールオン4は、少ないインプラント本数で全顎の歯を支える革新的な治療法ですが、すべてのケースが成功するとは限りません。失敗するケースにはいくつかの共通点があり、適切な対策を講じることでリスクを軽減することができます。
1. インプラントが骨と結合しない(オッセオインテグレーションの失敗)
オールオン4の成功には、インプラントが顎の骨としっかり結合することが不可欠です。しかし、以下のような要因で結合がうまくいかないことがあります。
- 骨密度が低い(骨粗しょう症など)
- 喫煙習慣(血流が悪くなり、骨との結合を阻害する)
- 糖尿病などの全身疾患(傷の治りが遅く、感染リスクが高い)
- 術後の過度な負荷(硬いものを噛む、適切なケアを怠る)
▶ 対策:事前のCT検査で骨密度を確認し、必要であれば骨造成を行う。禁煙を心がけ、術後は指示通りのケアを徹底する。
2. インプラント周囲炎による脱落
インプラント周囲炎とは、天然歯の歯周病に似た症状で、インプラントを支える骨が炎症によって溶けてしまう状態です。
- 歯磨き不足による細菌感染
- 定期的なメンテナンス不足
- 噛み合わせの不具合で過度な負担がかかる
▶ 対策:術後の適切な歯磨きと、定期的な歯科健診を受けることで早期発見・早期対応が可能。
3. 噛み合わせの問題
オールオン4は4本のインプラントで全体を支えるため、噛み合わせが悪いと以下のような問題が起こります。
- インプラントや被せ物が破損する
- 顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こす
- 食事がしにくい、発音がしづらい
▶ 対策:術後の噛み合わせ調整をしっかり行い、違和感がある場合は早めに歯科医に相談する。
4. 手術の計画ミス(埋入位置の問題)
オールオン4はインプラントの埋入位置が非常に重要です。
- 角度が悪いと噛む力が均等に伝わらず、片側に負担が集中する
- 神経や血管を損傷してしまうリスクがある
- 事前のシミュレーション不足で不安定な仕上がりになる
▶ 対策:CTやデジタルシミュレーションを活用し、正確な埋入位置を計画することが重要。経験豊富な歯科医を選ぶことも大切。
5. 即時負荷(手術当日に仮歯を装着)のトラブル
オールオン4の魅力の一つは、手術当日に仮歯を装着できる即時負荷が可能なことです。しかし、以下のようなリスクがあります。
- インプラントに過度な負担がかかり、骨と結合しにくくなる
- 噛み合わせが不安定で、仮歯が破損する
▶ 対策:初期のうちは硬いものを避け、インプラントが完全に安定するまで慎重に過ごすことが大切。
オールオン4は優れた治療法ですが、成功のためには 事前の診査・診断、術後のメンテナンス、適切な歯科医院選び が欠かせません。
特に以下のポイントに気をつけましょう。
- 骨の状態をしっかりチェックし、必要なら骨造成を検討
- 喫煙や糖尿病など、リスクを最小限にする努力をする
- 噛み合わせや負荷を考慮し、定期的なメンテナンスを受ける
- 手術の経験豊富な歯科医を選ぶ
オールオン4を検討されている方は、 信頼できる歯科医院でしっかり相談し、適切な診断のもとで治療を進めること が重要です。
オールオンフォーを失敗しない為にはどうすればいい?

オールオンフォーを行うのは上顎や下顎の片顎のみ、もしくは上下全顎の場合もあります。例えば上顎にオールオンフォーを行う場合、上顎洞や鼻腔を避ける事を徹底しなければなりません。歯槽骨を貫通してしまうと、蓄膿症や上顎洞炎という後遺症に悩まされることになるからです。
下顎に行う場合、下顎管と呼ばれる静脈や神経の通った部分を避ける事が必要です。誤って傷つけてしまえば、神経麻痺、もしくは出血が止まらない事故になりかねません。
では、オールオンフォーを成功するためにはどうしたらいいのか。
多数の症例を診療してきた医院で、オールオンフォーの治療を受ける事が、危険を回避する方法と言えます。実績や経験がある担当医、設備がしっかりした医療機関であれば、CT撮影などの術前の検査を怠ることなく、データを利用して綿密な治療計画を立ててから手術を行います。
そして、術後管理や腫れが引かない場合の処置もきちんと行える歯医者かと考慮することも忘れないでください。
オールオン4にはどんな失敗のリスクがあるの?
オールオンフォーが失敗するケースは、通常のインプラント手術の場合にも起こり得るリスクに関するものが殆どです。
1.インプラントの埋入位置や深さや角度がズレた
オペを担当した歯科医師の技術不足により、インプラントが治療計画通りの位置や深さや角度で埋入できなかった場合、インプラントや上部構造への力のかかり方のバランスが狂い、噛み合わせがおかしくなるリスクがあります。
また、治療計画通りに埋入できなかった場合、血管や神経を傷つけるリスクもあります。
2.インプラントが骨と結合しなかった
インプラントは人工歯根が骨としっかり結合しなければしっかりと噛めるようになりません。しかし様々な理由で、インプラント体と歯槽骨の結合がうまくいかず、インプラントが骨と固定されない場合があります。 インプラントが骨と結合しにくい理由として考えられるのは、以下のようなものです。
1.手術の技術による問題
- インプラントが適切な位置に埋入されていない・・埋め込む位置や深さや角度などが治療計画とずれてしまった場合は、骨とうまく結合しないことがあります。
- 埋入時のドリルによるオーバーヒート・・インプラントを埋入するために顎の骨にドリルで穴を開ける際に、ドリルのふれた骨の温度が上がり過ぎた場合には骨にダメージを与え、インプラントが骨とうまく結合しないことがあります。
2.骨の質や量による問題
- 骨の量が足りない、質が良くない等の場合はインプラントが骨と結合しにくくなります。
- 骨密度が低い、骨の再生がうまくいかない等の場合は、インプラントがぐらついたり安定しない状態になる可能性があります。
3.患者さんの健康状態による問題
- 糖尿病や喫煙はオッセオインテグレーションを阻害し、骨とインプラント体がしっかり結合しない可能性があります。
- また、糖尿病や喫煙によって血液循環が阻害されて、傷の修復や骨・組織の再生、治癒が遅れることがあります。
4.患者さんのお口の衛生状態による問題
- 毎日の歯みがきが不十分でインプラントの周囲がきれいに清掃されず、口腔衛生が良くない場合には、細菌への感染のリスクが高まり、骨とインプラントの結合がしにくくなる可能性があります。
- 手術後に感染すると患部に炎症が起こり、インプラントと骨の結合に影響を及ぼす可能性があります。
3.インプラント周囲炎になってしまった
インプラントは歯根膜をもたないため、感染にとても弱く、インプラントの周囲の歯茎が歯周病(インプラント周囲炎)になってしまうと進行が早くなります。
そのため毎日のセルフケアを丁寧に行ってインプラントの周囲に食べカスなどの汚れがつかないように気をつけると共に、数か月毎に定期健診とクリーニングを必ず受けていただくことが必要になります。
4.上部構造の色が思っていたよりも白すぎた
上部構造を作る際に、セラミックの色を決めるのですが、白い歯を好む方が多いです。自然な白さなら良いのですが、上部構造が白すぎると、笑った時などに歯だけが浮き出たように見えて不自然になりますので、程々の白さで作った方がお顔になじみます。
オールオンフォーとはどんな治療法?

オールオンフォーとはどんな治療方法なのか、治療の流れに従ってご説明します。まず、4~6本のインプラントを顎の骨に埋め込みます。太い血管や神経を避けて斜めに埋め込む術式であることがオールオンフォーの特徴です。
オールオン4では1つの総入れ歯のように全てが連結されている上部構造(人工歯)を装着します。つまり、4~6本のインプラントで片顎の12本の歯を作ることが出来ます。そして手術当日に仮歯が入るのもオールオン4の特徴です。
手術から数か月たち、インプラントが骨としっかりと結合したら、仮歯を外して、最終的には固定式の連結した上部構造を入れて完成です。歯ぐきの部分は樹脂製で目立たない色で作られているため、周りから見ても違和感は少ないです。
【動画】All on 4の解説 4倍理解出来るかも
All-on-4についての解説動画です。ホワイトボードに書きながらご説明します。
オールオン4の治療例
全ての歯がぐらぐらだった患者さん。上顎はチタン床の部分入れ歯、下顎はオールオン4で治療しました。画像の下のリンクからご覧ください。

動画:オールオンフォー(all-on-4)について
インプラント市民公開講座より抜粋。オールオンフォーについての解説。
まとめ
総入れ歯が合わなくてお困りの方や、歯がボロボロで噛めないという方は、オールオンフォー4治療によって綺麗な歯列になり、食べ物を快適に噛む事が出来たり、人と会う事が楽しくなると思います。
ただし、オールオンフォーの治療後は、定期的に通院し、インプラントのメンテナンスを必ず受けるようにして下さい。きちんとしたメンテナンスを受け続けることで、インプラントをより長期的に保つことが出来るようになります。