
オールオンフォーという治療法はAll on 4、つまり「全ての歯を4本(ケースによっては6本)のインプラントの埋入により作成する」という技術です。
さまざまな理由で全歯を失った方にとっては、オールオンフォーは素晴らしい治療法といえます。ただ、失敗というトラブルが潜んでいることは否定できません。では、その問題を回避するためにはどうすればいいのかについてご説明します。
目次
オールオンフォーを失敗しない為にはどうすればいい?

では、オールオンフォーを失敗しない為にはどうすればいいのでしょうか。
オールオンフォーを行うのは上顎や下顎の片顎のみ、もしくは上下全顎の場合もあります。例えば上顎にオールオンフォーを行う場合、上顎洞や鼻腔を避ける事を徹底しなければなりません。歯槽骨を貫通してしまうと、蓄膿症や上顎洞炎という後遺症に悩まされることになるからです。
下顎に行う場合、下顎管と呼ばれる静脈や神経の通った部分を避ける事が必要です。誤って傷つけてしまえば、神経麻痺、もしくは出血が止まらない事故になりかねません。
では、オールオンフォーを成功するためにはどうしたらいいのか。
多数の症例を診療してきた歯科医院で、オールオンフォーの治療を受ける事が、危険を回避する方法と言えます。実績や経験がある担当医、設備がしっかりした医療機関であれば、CT撮影などの術前の検査を怠ることなく、データを利用して綿密な治療計画を立ててから手術を行います。
そして、術後管理や腫れが引かない場合の処置もきちんと行える歯医者かと考慮することも忘れないでください。
オールオン4にはどんな失敗のリスクがあるの?
オールオンフォーが失敗するケースは、通常のインプラント手術の場合にも起こり得るリスクに関するものが殆どです。
1.インプラントの埋入位置や深さや角度がズレた
オペを担当した歯科医師の技術不足により、インプラントが治療計画通りの位置や深さや角度で埋入できなかった場合、インプラントや上部構造への力のかかり方のバランスが狂い、噛み合わせがおかしくなるリスクがあります。
また、治療計画通りに埋入できなかった場合、血管や神経を傷つけるリスクもあります。
2.インプラントが骨と結合しなかった
インプラントは骨としっかり結合しなければしっかりとした歯が作れません。しかし様々な理由で、インプラント体と歯槽骨の結合がうまくいかず、インプラントが骨と固定されない場合があります。 インプラントが骨と結合しにくい理由として考えられるのは、以下のようなものです。
1.手術の技術による問題
- インプラントが適切な位置に埋入されていない・・埋め込む位置や深さや角度などが治療計画とずれてしまった場合は、骨とうまく結合しないことがあります。
- 埋入時のドリルによるオーバーヒート・・インプラントを埋入するために顎の骨にドリルで穴を開ける際に、ドリルのふれた骨の温度が上がり過ぎた場合には骨にダメージを与え、インプラントが骨とうまく結合しないことがあります。
2.骨の質や量による問題
- 骨の量が足りない、質が良くない等の場合はインプラントが骨と結合しにくくなります。
- 骨密度が低い、骨の再生がうまくいかない等の場合は、インプラントがぐらついたり安定しない状態になる可能性があります。
3.患者さんの健康状態による問題
- 糖尿病や喫煙はオッセオインテグレーションを阻害し、骨とインプラント体がしっかり結合しない可能性があります。
- また、糖尿病や喫煙によって血液循環が阻害されて、傷の修復や骨・組織の再生、治癒が遅れることがあります。
4.患者さんのお口の衛生状態による問題
- 毎日の歯みがきが不十分でインプラントの周囲がきれいに清掃されず、口腔衛生が良くない場合には、細菌への感染のリスクが高まり、骨とインプラントの結合がしにくくなる可能性があります。
- 手術後に感染すると患部に炎症が起こり、インプラントと骨の結合に影響を及ぼす可能性があります。
3.インプラント周囲炎になってしまった
インプラントは歯根膜をもたないため、感染にとても弱く、インプラントの周囲の歯茎が歯周病(インプラント周囲炎)になってしまうと進行が早くなります。
そのため毎日のセルフケアを丁寧に行ってインプラントの周囲に歯垢がつかないように気をつけると共に、数か月毎の歯科医院での定期健診を必ず受けていただくことが必要になります。
4.上部構造の色が思っていたよりも白すぎた
上部構造を作る際に、セラミックの色を決めるのですが、白い歯を好む方が多いです。自然な白さなら良いのですが、上部構造が白すぎると、笑った時などに歯だけが浮き出たように見えますので、程々の白さで作った方がお顔になじみます。
オールオンフォーとはどんな治療法?

オールオンフォーとはどんな治療方法なのか、治療の流れに従ってご説明します。まず、4~6本のインプラントを顎の骨に埋め込みます。太い血管や神経を避けて斜めに埋め込む術式であることがオールオンフォーの特徴です。
オールオンフォーでは1つの総入れ歯のように全ての歯が連結されている上部構造(人工歯)を装着します。つまり、4~6本のインプラントで片顎の全ての歯を作ることが出来ます。そして手術当日に仮歯が入るのもオールオンフォーの特徴です。
手術から数か月たち、インプラントが骨と結合したことをドクターが確認したら、仮歯を外して、最終的には固定式の連結した上部構造(多くはセラミック製なので前歯も美しい仕上がりです)を入れて完成です。歯ぐきの部分は樹脂製で歯茎の色に似せて作られているため、周りから見ても違和感は少ないです。
オールオン4の治療例
全ての歯がぐらぐらだった患者さん。上顎はチタン床の部分入れ歯、下顎はオールオン4で治療しました。画像の下のリンクからご覧ください。

動画:オールオンフォー(all-on-4)について
インプラント市民公開講座より抜粋。オールオンフォーについての解説。
オールオン4で失敗しない為にはに関するQ&A
オールオンフォーは、4~6本のインプラントを使って上部構造(人工歯)を支える治療法です。顎の骨にインプラントを斜めに埋め込むことが特徴で、手術当日に仮歯を装着することも行います。
オールオンフォーの失敗リスクには以下の点が挙げられます。 1.インプラントの位置や深さ、角度がズレることによる噛み合わせの問題や血管・神経の傷害リスク。 2.インプラントと骨との結合が不十分なために歯が固定されない場合。 3.インプラント周囲炎による感染リスク。 4.上部構造の色が白すぎることによる見た目の不自然さ。
オールオンフォーを成功させるためには以下の点に注意する必要があります。 1.経験豊富な歯科医院で治療を受けること。 2.CT撮影などの術前検査を行い、綿密な治療計画を立てること。 3.術後の適切な管理や腫れの処置を行える歯医者を選ぶこと。
まとめ
総入れ歯が合わなくてお困りの方や、歯がボロボロで噛めないという方は、オールオンフォー4治療によって綺麗な歯列になり、食べ物を快適に噛む事が出来たり、人と会う事が楽しくなると思います。
ただし、オールオンフォーの治療後は、定期的に通院し、インプラントのメンテナンスを必ず受けるようにして下さい。きちんとしたメンテナンスを受け続けることで、インプラントをより長期的に保つことが出来るようになります。